なぜ、ゆっくり動くの?
ゆっくりやることで、見えてくるものがあります!
頑張らないで! ゆっくりと! 力を抜いて!
ユックリの大きな効用
より速く、より強く、より巧みに、より極限まで
こんな価値観をふつうにもつ現代人が「ニコニコ太一気功」に
参加されると、相当、面食らわれるかもしれません。
なにしろここでいつも言うことは、こうです。
頑張らないで! ゆっくりと! 力を抜いて!
エッ、いったいどういうこと? と思われるかもしれません。
サークルでやっている起勢と収勢の練習を例に、「ゆっくり」の意味について考えてみましょう。
起勢と収勢とは、太極拳などをやったことのある人にはお馴染みでしょうが、足を揃えて立った姿勢から、肩幅に開いて、両手を前に上げ、その手を再び降ろして、開いた足を元通りに戻すという、極めて簡単な動きです。
動作自体何も難しいことはありませんし、やれば殆どすぐできますから、気功や太極拳の教室ではサラッと通り過ぎるところもあるようです。
でも、これをユックリと、”味わい”ながらやっていくと、様相は相当に変わってきます。
どうやって足をもちあげるのか…、体重移動のやり方は…、呼吸は…、手の持ち上げ方とタイミングは…、手、指、手首の使い方は…、どの段階で降ろすのか…、足裏や足の指への体重の乗せ方は…、足の収め方は…、内面の気持の持ちようは…、目線は…
それこそありとあらゆることが”気づき”の範疇に入ってきます。
何気なくやっていた際には気づかなかったことが、徐々にではあれ、見えはじめてきます。
体のちょっとした歪みやこわばりに気づかされることもあります。右には動きやすいが、左には動きにくいとか…。左足に比べて、右足の動きがどうも鈍そうだとか…
実は、これこそが、ユックリの大きな効用です。
速く、強く、巧みにやろうとしていた時にはよく見えなかったものが見えてくる。
そればかりか、過大な要求にオーバーヒートしがちであった脳も、動きが細やかでユックリしているほど、脳の深いところからの調整機能が働くようになってきます。また、単純な繰り返しのような動作は、脳が休まり、リラックスできる効果も期待できます。
小さく動くことで、外側の筋肉ではなく、体の体幹(インナーマッスル)を使う、といった感覚も育ってきます。
「ニコニコ太一気功」がやろうとしているのは、そんな人間調整のための運動論でもあるのです。